施行以来現在まで毎年のように改正・施行されてきた再エネ特措法ですが、2024年4月から新たにFIT/FIPの認定要件に関して改正が行なわれますので、いち早く皆様に内容をお伝えしようと思います。
改正されると見られているのは、設備を建設する際の近隣住民への事前周知や説明会に関しての具体的なルールです。
FIT制度が開始されて以後、太陽光発電の導入量は飛躍的に増加しましたが、一方で安全・防災面、地域の景観、周辺環境への影響、将来的には太陽光パネルなど産業廃棄物の大量廃棄に対する懸念など、課題は山積しています。
そこで経済産業省資源エネルギー庁では、今まで「再生可能エネルギー長期電源化・地域共生ワーキンググループ」において検討を重ね、9月26日第11回の同ワーキンググループで取りまとめた案を第2次取りまとめ案として再エネ特措法を改正することが公表されました。
第1次の取りまとめでは設備の安全性に大きく関わる内容の為、2023年10月より改正省令が公布され施行されています。
まずは第1次の取りまとめから見ていきますと、
1.森林法における林地開発許可
2.宅地造成法及び特定盛土等規制法の許可
3.砂防三法(砂防法・地すべり防止法・急傾斜地法)における許可
これらの、一度認可対象行為が行われた場合に原状回復が著しく困難な土地開発に関して、FIT/FIP認定手続きを厳格化し認定の際の申請要件としました。
図.再エネ発電設備の設置と土地造成の安全性確保に関する法令 出典:再エネ長期電源化・地域共生WG(クリックで拡大します)
第1次取りまとめを踏まえて第2次取りまとめでは、設備を作る際に行なわれるべき説明会に関して、規模や設置場所・形態の違いを勘案し次のように整理されました。
1.50kW以上の高圧・特別高圧の案件は原則として説明会の開催を求める
2.低圧案件については、原則として説明会以外の手法での事前周知を求めるが、複数の電源が至近距離内に集合する場合や、周辺地域や周辺環境に影響を及ぼす可能性が高いエリアに設置する場合は、説明会の開催を求める。土地開発に
関する上記1~3の許認可が必要なエリアや、土砂災害警戒区域のエリア、条例による景観等の保護エリアがこれに該当する
3.住宅用太陽光発電(10kW未満)は、事前周知要件の対象外とする
次に説明会での説明事項と開催時期については、
1.事業計画の内容 2.関係法令順守状況 3.土地権原(けんばら)取得状況 4.事業に関する工事概要
5.関係者情報 6.事業の影響と予防措置について説明が求められます。
FIT/FIP認定申請のおよそ3か月前までに実施し、開催案内を2週間前までにポスティング等の方法により行なうことが求められます。
説明会を実施する際には再エネ発電事業者が出席し、質疑応答の時間を設け、質問や意見には誠実な回答が求められます。事後検証できるよう事業者には説明会の録画・録音データの保管義務を課し、万一住民に対して不誠実な対応や恫喝などが認められた場合には認定取り消しになることもあります。
「周辺地域の住民」の範囲ですが、事業場所の敷地境界から一定距離の居住者と、再エネ発電設備の設置場所に隣接
する土地・建物の所有者とされています。一定距離の基準ですが低圧電源は100m、高圧・特別高圧は300m、環境アセスの対象となる電源は1kmとされています。
この他にも事業の一部を委託・再委託されている事業者についても、認定基準や認定計画を順守するよう認定事業者に監督義務を課しています。
これらの認定計画に違反した事業者は指導・改善命令を経て改善が認められない場合、認定が取り消されることになり、違反状態の間は交付金の一時停止処分が履行されます。
いかがでしたでしょう。この記事に記載した以外の細かな点については、資源エネルギー庁の「第11回再生可能エネルギー長期電源化・地域共生ワーキンググループ」をご覧ください。
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/saisei_kano/kyosei_wg/011.html