2024年5月29日に第62回「再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会」が開かれました。
そこで話し合われたのは「長期安定電源化に向けた関係プレーヤーのアクション(案)」です。尚、ここでは再エネの中でもFIT/FIP導入容量の88%を占めている太陽光発電が対象とされました。
日本の太陽光発電市場の大きな特徴は低圧の発電設備がとても多いことです。
しかもそのうちの57%が個人所有です。日本の太陽光発電設備のメンテナンスがヨーロッパ各国に比べ普及していない大きな要因でもあります。
今後はこのような個人所有の設備が、どのように事業を継続していくか、また設備の売却をしたいと考えたときにマーケットをどう探すか、売却相場はいくらぐらいなのかが大きな焦点になってくるでしょう。
そこで注目されているのが、アグリゲーターの存在です。
アグリゲーターとは、複数のエネルギー発電設備や蓄電設備、需要家のエネルギー需要量など、複数の電力資源を一元管理する事業者(特定卸供給事業者)のことを指します。
小規模な発電設備をアグリゲーターが一元管理するようになれば、そこにはどうしても適切なメンテナンスが必要になってきます。
何故か? 考えてみましょう。
皆さんは「デマンド・レスポンス(DR)」という言葉を聞いたことがありますか?
例えば真夏の猛暑日などに電力の需要が急激に高くなり、電力が足りなくなりそうなときなど、電力会社は電気の需要家(つまり我々です)に節電の依頼をします(下げデマンド・レスポンス)。抑制された電力はアグリゲーターによって一旦取りまとめられ電力会社に提供される、といった仕組みのことです。
その逆に供給量が需要量を上回るときは、電気を使う側にもっと電気を使ってくれるように要請(上げデマンド・レスポンス)することもあります。
アグリゲーターは需要と供給のバランスを管理する重要な役割を担うのです。
そのデマンド・レスポンスを行なうためには、管理する発電設備の発電状況をしっかりマネジメントできる体制が必要で、そのためには適切なメンテナンスが欠かせない条件になるという訳です。
個人所有の設備ではアグリゲーターのような管理はほとんどできませんので、アグリゲーターに取りまとめてもらう契約スタイルがこれから進んでいくとみられています。
しかしアグリゲーターが、管理する設備のO&Mをすべて自身で賄うのは難しいです。
メンテナンス事業者の手を借りメンテナンスする局面が増えていくでしょう。
太陽光発電メンテナンス技士の皆さんの活躍の場がますます広がっていくことと思います。
そしてこうした動きに伴って、2025年春ごろを目途にFIT/FIPの定期報告項目に点検等の実施状況の報告が追加されることになりました。
また、事業のリスクにも定期的な評価をすることが求められることになります。
優良な事業者に対しては「長期安定適格太陽光発電事業者(仮称)」として認定しようとする動きもあります。
まだ不透明な部分もたくさんありますが、太陽光発電設備の所有者は社会的責任がますます大きくなっていくことは間違いないでしょう。